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カルヴァドス・ランデブー



...





林檎は禁断の果実だ。





私は彼に会うときにはいつもビッグ・アップルを頼むようにしている。これが禁断の恋であると忘れないようにするため。


「今日も一時間しか一緒にいられないけどごめんね。」


「いいのよ。会ってくれるだけで嬉しいから。」



嘘だ。



【一時間しか一緒にいられないなんて。私のことをなんだと思ってるの。本気を出せば一晩くらい一緒にいられるくせに、この甲斐性なし。】



思わず口に出してしまいそうな言葉を抑えるためにビッグ・アップルを口にする。


これは禁断の果実なのだ。



ビッグ・アップルにつかわれるのはカルヴァドスというブランデーだ。カルヴァドスは長い長い熟成期間を置いて作られる。熟成させて、そこから更に蒸留して、そのほんの一雫から生まれるカクテルがビッグ・アップルなのだ。私はこのカクテルを口にするとき自分の中の彼への思いを熟成させているような気分になるのだ。出口のわからないこの思いを熟成させて時間をかけて、そこから生まれるほんの一雫の美しい思いだけを彼に贈ろう。





この恋は禁断の果実だ。





私はビッグ・アップルをもう一杯頼んだ。








ポンコつっ子