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バナナの皮で本当に滑るのか検証してみた



あれは私が中学生のときの話だ。



私は昼休みの過ごしかたを模索していた。おにごっこもドロケイも淡い思春期の中学生を満たしてくれなかった。溢れんばかりのエネルギーを発散させたくて仕方がなかった。この迸る衝動を抑えきれなかった。新しい刺激を求めていた。世界を変えるような鮮烈な衝撃を。






給食当番の友人Aは言った。

「今日の果物はバナナだね」


そのときポンコツの頭に電流が走った。



「バナナの皮で本当に滑るのか検証したい...!!」



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私達は賛同者に声をかけ集められるだけのバナナの皮を集めた。約15人分のバナナの皮が集まった。これだけ集まれば充分だろう。あの昭和アニメのようなツルッと滑る感覚を味わいたかった。作戦決行は13:00〜13:20の昼休みだ。この間に私達はバナナの皮で滑り、なおかつ先生にばれぬよう処理をしなければならない。一分一秒が闘いだった。



13時、定刻だ。



担任が教室を出て職員室へ向かったのを確認し、私達は15人分のバナナの皮を抱えて廊下へ飛び出した。まずはバナナの皮を廊下に撒き散らした。そして廊下の端から全速力でバナナの皮へ飛び込んだ。

しかし私達が滑ることは叶わなかった。上履きの「キュキュッ」というゴム底の音が響きわたるだけだった。そこで気づいたのだ、滑らかにすべるためには廊下にバナナの皮の成分を塗りたくらなくてはならないことに。

私達は無我夢中で廊下にバナナの皮を塗りたくった。まるで大掃除のときの雑巾がけのようにそれは行われた。ここで私達は確信していた。



「これは...滑る...!!!」





バナナの皮の成分を存分に廊下に付着させ、再びトライした。廊下の端から全速力でもう一度このバナナのもとへ駆け寄っていた。ただ滑らかにすべりたい、その思いだけが私達の心にあった。その思いが私達をひとつにした。



バナナの皮へ足を踏み入れる。先程とは違うぬめりが私の足をすくった。摩擦係数μの存在など知らぬ中学生のスカートがまくり上がった。盛大にバナナの皮で滑りこけた。水玉のパンツが姿を現した。実験は成功した。


「すべったあああああああああああああ!!!!」



謎の達成感が私達の心を満たした。



喜びも冷めやらぬそのときだ、5分前の予鈴が鳴り響いた。






大変な事態だ。他の生徒教師にばれぬようバナナの皮を処理しなければならない。私達は愚かだった。片付けのことなどすっかり忘れてただ滑ることだけに集中していたせいで廊下の半分ほどをバナナ責めにしていた。たった5分で何をどうしろというのか。圧倒的絶望。このままでは部活で罰則校庭30周が待ち受けている。なんということだろうか。若さゆえの過ち、さよなら私達の平穏な廊下生活。さよなら水玉パンツ。





とにかく廊下に敷けるだけのトイレットペーパーを敷いた。そして思いっきり拭き取る、ただそれだけに集中した。しかしバナナの皮のぬめりはそう簡単に落ちなかった。これほどバナナのことを憎く思ったことがあっただろうか。給食にバナナさえ出ていなければ。なぜ今日に限ってみかんではなくバナナだったのか。バナナが憎い、バナナが憎い。その思いをあざ笑うようにバナナのぬめりは廊下にこびりついて離れなかった。







そして悪魔の時間が来てしまった。



クラスメイトのB君が校庭から戻ってきた。B君はリレーの選手になるほどの駿足の持ち主だ。校庭でサッカーでもしていたのだろうか、汗ばんだ様子で教室へ駆け戻ってきたのだ。
教室の前には廊下、その廊下にはバナナの皮トラップがしかけられていることなど微塵も気づかないB君が全速力でこちらへ向かってくる。




「B君ダメえええええええええ!!!」




私達の悲鳴が校舎に響きわたった。








校庭は50周走った。









あぁ、素晴らしきイグ・ノーベル賞