残像との邂逅



パンケーキを食べたいと思い試行錯誤していた。よしこれでいいだろうと思って口にしたら父の姿がふと浮かんできた。私は無意識のうちに父の味を再現しようとしていたのだ。

料理を日常的につくるわけではなかったがつくり出すととことんこだわるような人だった。パンケーキ以外にもいくつかこだわりの◯◯があったことを思い出す。


すでに声も思い出せない。面影も朧げだ。これだけ時間が経ったのだから。


しかしふとしたきっかけに父の姿を思い出す。金木犀の香り、冬のオリオン座、それは父が生きていた証。束の間の邂逅。私ももう大人になった。しかし父のことを思い出すとき、私はまだ子供の姿のままだ。