大切な人をなくした人へ


大好きだったあの子が遠くへ旅立ってしまった。もう夢の中でくらいしか会えない大切な人。一緒に見た夜景も焦げてまずかったホットケーキも、あのときあの場所あの瞬間を共有した相手がいなくなる。それは世界が180度くるりと回ったような、まるで世界が終わったことに等しい衝撃。人は生きてるうち何度大切な人をなくさなければならないのだろう。出会うほど、大切な人が増えるほど、それは私達に襲い来る怪物のようなものだ。


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どうしたって人間は二人いたら出会うか別れるかしかないわけで、それが価値観の違いなのか、はたまた命を分かつのかなんて誰にもわからないけれど、一度大切な人をなくしたひとなら誰だって思い知る、大切なものを失う悲しみ、苦しみを。私達はそれをひとりで抱えることができない。私達は喪失の扱いになれていない。本を読んでみても、映画を観たとしても、そこに「大切だった」貴方の姿はないのだから。あぁ、なぜあのとき貴方を労う一言をかけてあげられなかったのだろう。寂しげな貴方を抱きしめてあげることをしなかったんだろう。そんな後悔ばかりが残って心を締め付ける。「大切な人をなくした人」に遺るのはどうしようもない後悔と孤独だ。


大切な人をなくした貴方、貴方は彼、もしくは彼女に全力の心を注ぐことができなかったのかもしれない。その場かぎりの面倒くささで彼女を遠ざけたかもしれない。遺された我々には後悔と自責の念ばかり遺るのかもしれない。しかし本当にそれだけなのだろうか。彼が貴方に遺してくれたのはそんなつらい感傷ばかりなのか?彼はそんなに悪い人だったのだろうか。彼の目にうつる貴方はいったいどんな姿をしていたのだろうか、考えたことはあるだろうか。貴方がなくした大切な人は、大切な人にとっての貴方だったのではないか。二人の時間はつらいものばかりだっただろうか。貴方の目の前で彼は笑っていたのではないだろうか。ときには傷つけたこともあったかもしれない。泣いているときもあったかもしれない。それでも大切だと思える彼等の存在は尊いものだったのではないだろうか。



ちゃんと思い出す。ちゃんとありのままの姿を覚えていたい。それが大切な人にできる精一杯の感謝だから。だからちゃんと向き合おう、その喪失に向き合おう。それはきっと貴方のためになる。また別のどこかで大切な人を見つけた貴方の心を豊かにしてくれる。そのとき私達は、人を慈しむことの意味を知るだろう。


大切な人をなくした人へ