時間が止まった部屋で



うちの父が首を絞めて自殺した部屋は今も父の部屋のままになっている。
今でも父の倒れている姿が鮮明に思い出せるあの部屋に私は長居はしないでいた。
部屋が余っているほどの大きさもないこの家で、不自然に部屋が余っている。ずっと気になってはいた。片付けもあまりしないまま少しずつ物が積み重なって床も見えないくらい物が溢れている。時間の経過を辿るように物が増えてきた。それだけ時間が経ったのだと感じる一方で、もう一歩踏み出せずにいる私の心も薄っすらと滲み出ているようだ。

少しゴミ屋敷に住むお婆さんの気持ちもわかる気がする。物が溢れていると当時のことに少し靄がかかるから、自分の記憶と対峙せずにすむので、物があると少し安心できる。

でも父を忘れたくもなくて、本当に上手く言葉にできないけれど、自殺したという事実は肯定的に受け入れられなかったとしても、生前恐らくひとりで苦しんでいた父を想像して悼むことを誰かに許してもらいたかった。

もう父の声も思い出せないけれど、この部屋に来れば父のことを思い出すことができる。時間が止まったこの部屋が、新しい時間を紡ぐかもしれないし、止まったままかもしれないし、それはどうなるかわからないけど、私は時間をかけて少しずつ父の存在を心に染み込ませて生きたいと思っている。あぁ、もしかしたらそのためにこの部屋の時間を止めているのかもしれないなぁ。今私は幸せで、幸せであることに感謝していて、でもそれは父が私に苦しみや悲しみを命をもってして教えてくれたからだと思うんだ。父がいなければ今の私はいなかったのだから。

たまに思い出して泣きたくなる夜もある。遺体になった父の姿が何度もフラッシュバックしてひとりで悲しみを抱えきれなくなってしまったときもあった。それでも私は、父の娘に生まれてきて良かったってみんなに伝えたいんだ。





だから、読んでくれてありがとう。